novel

+挨拶の言葉は(外人X大学生)/オリジナル+
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恋人に振られたばかりなのに、バーで出会ったちょっとおかしな外人、ロブのことがあっと言う間に好きになり寝てしまった。
今までこんな事がなかったので戸惑ってはいるが、後悔はしていない。
でもアメリカに住んでいるロブとこの先どうなるのか、一晩経って冷静になると不安だった。
このまま何も話さずに帰りたくないが、何をどうやって聞けばいいのかも分からない。
一体どうすればいいんだろう。
そんな事を考えながらバスルームから出た雪成が目にしたものは、ベッドの上にズラリと並べられたスーツの山だった。
「何やってんの?」
「あ、ユキ。丁度よかった。どのスーツがいいと思う?」
「・・・出掛けるんだ?」
自分はこれからの二人の事を真剣に考えていたというのに、どうやらロブにとってはそんな事はどうでもいいらしい。
バスローブを着たまま、嬉しそうにスーツを選んでいるロブを見たら、無性に腹が立ってきた。
「別にどれでもいいんじゃないの」
刺々しい口調に気づいたのか、ゆっくりと近づいてきたロブが雪成のおとがいに指をかけ、そっとキスをしてきた。
「僕の愛しい人、そう言う訳にはいかないんだよ。今から僕の大事な人、ユキの両親に会いに行くんだから」
「はっ?」
ムッとしていた事も忘れ、雪成は思わずポカンと口を開けた。
「だからユキの両親に挨拶に行くんだよ。ちゃんとした格好をしないと嫌われたら大変だろ?」
「いや、だから何でうちに来るんだよ?」
「やっぱりユキをさらう立場としては、挨拶はちゃんとしなくちゃ」
「ちょ、ちょっと待って」
ロブの言いたい事は分かったが、納得できるかと言えばそれはまた別問題だ。
「さらうって何だよ。それにまだ二人のこれからの事、何も話し合ってないじゃないか。言ってる事の意味が分からない」
「ユキは僕と一緒にいたくないのか?」
「そりゃいたいけど・・・」
「だったら何の問題もない。僕の家はロスにあるから、ユキはそこで一緒に暮らすんだ」
「いや、だからなそんな事急に言われても・・・」
「もちろん拠点はアメリカだけど、一年に何度も日本に来るからユキは何も心配しなくていいよ」
そう言う事を言いたかった訳じゃないが、ロブの突拍子もない話に雪成は気を落ち着かせる為、深呼吸を何度も繰り返した。
「ロブの言いたい事は分かった。けど俺だって内定した就職先があるし、そんな話一言だって相談してくれなかっただろ」
「これから話すつもりだったんだけど・・・もしかしてユキをビックリさせたのか?」
ビックリさせた位のものじゃなかったが、そんな雪成を不思議そうに見ているロブを見ていると文句を言う気も失せてしまった。
「ロブ。こういうのは二人でちゃんと話し合って決めないと。それにロブの気持ちは嬉しいけど、それを直ぐに受け入れられるって言う訳でもないし」
「ユキは僕と一緒に暮らすのが嫌なのか?」
「だからそうじゃないって。俺は既に就職先も決まってるし、アメリカに行くなら言葉だって覚えないと・・・とにかく、色々準備があるだろ?」
ロブの気持ちは嬉しいが、それに二つ返事で応えられる程甘いものではない事も分かっている。
「その就職先はユキの夢なのか?」
「夢って言う訳じゃないけど・・・」
「だったら、僕の側で仕事を手伝って欲しい。仕事でもプライベートでもパートナーになって欲しい。一緒に色々なものを見て回って、それを欲しいと思ってる人に届けたいんだ」
ロブの話を聞いてそれらを思い浮かべてみると、雪成の気持ちはグラグラと揺れ始めた。
「でも話も出来ないし・・・やっぱり不安だよ」
「イエス、ノー、アイ・ラブ・ユーが話せたら大丈夫だよ、スウィートケーキ。出来たらアイ・ニード・ユーも言ってくれたら嬉しいんだけど」
ロブの楽観的思考に、雪成は思わず吹き出してしまった。
「それって会話にならないだろう?」
「僕とだけ話してればいいじゃないか。それに会話が上達するのは、ベッドの中って言うしね」
意味ありげにウィンクするロブに、雪成は昨晩の事を思い出してサッと頬を染めた。
「ユキ、僕は本気だよ。両親に会いに行くのも、一緒にアメリカに行くのも・・・もちろん、二人が恋人だって言うのは暫くはナイショだけど、両親には僕に娘さんを下さいって言う気分で、ユキを下さいって言うんだ。素晴らしいだろ?」
一体どこでそんな事を覚えたんだと言いたくなるが、それでも雪成は何も言わずにくすぐったい気分でロブの話を聞いていた。
「ユキの気持ちは?言い訳や誤魔化しは聞きたくない。今の正直な気持ちだけを聞かせて」
「・・・・・・」
「ユキ・・・」
「・・・よろしく、お願いします」
「ああ、僕のスウィートケーキ。凄く嬉しいよ。直ぐに両親に会いに行こうと言いたいんだけどそれは夜にして、今からベッドの中でレッスンしよう」
差し出されたロブの手を取るとそっと引き寄せられ、雪成は自らその胸に身体を預けた。

END
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