novel

+Halloween Party(外人x日本人の2カップル)/オリジナル+
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「うん、分かった。それでいいよ」
アレックス・ウィンストンがバスルームから出てリビングに行くと、ソファーに寝っ転がって
恋人である柚木永遠が楽しそうに携帯で話していた。
こんな所でのんびり携帯で話しているなら、一緒にシャワー位入ってもいいんじゃないのかと少々ムッとしたが、日本語で話しているのを聞くとほんの少しだけ安心した。
愛しい恋人は住み慣れた日本を離れ、単身で渡米したため、こっちで母国語で話せる友達というのは数少ないし、その全ては自分の知っている人物ばかりで変に勘ぐる必要もない。
一緒に暮らしておきながら、そんなジェラシーなど必要ないと分かっていても、永遠の事になると途端に余裕がなくなってしまうのだ。
そして日本に住む事の出来ない自分に代わって、こうして永遠がこっちに着てくれた事が嬉しくもあり、寂しい思いをさせているんじゃないかと少しだけ申し訳なくも思ったりもする。
それでも自分は永遠を手放す事は出来ない。
だがこうやってリラックスしている姿を見ると、一緒に住む事に苦痛を感じているわけでも、
無理をしているわけでもないのだと分かり安心するのだ。
「じゃピザでも持っていくよ。うん。それじゃまた」
嬉しそうに言いながら永遠が携帯を切った。
「俺に黙ってどこに行くんだ?」
携帯を切ったばかりの永遠にわざとらしく声を掛けると驚いて起き上がったが、次の瞬間ニコリと微笑まれてアレックスは隣に座ると軽く抱き寄せた。
「ナイショ」
「どうせ、ユキナリの所だろ?」
「そう。何で分かった?」
「お前が日本語で話してた」
「そうだった」
笑いながら更に寄りかかってくる永遠の肩を抱くと、今話していた内容をアレックスに話し始めた。
「俺と雪成がこっちに着て初めてのハロウィンがもうすぐだろ?だから一緒にパーティしようって話してたんだ」
「そうか、初めてのハロウィンか・・・」
「どうせツアーの予定も入ってないし、ロブの家に行ってパーティしよう」
永遠に言われれば断れないし、断る気もない。
自分の友達であるロブことロバート・ウィルソンも、恋人は日本人で永遠の友達でもある高津雪成だ。
お互いに同じ境遇で、よく一緒に出掛けたりしているから気を使う必要もない。
「準備をしなくてすむなんて好都合だな。こっちは食料を用意するだけか?」
「そう。ピザとチキンとか持っていけばいいんじゃない?」
「そうだな。適当に持っていくか」
「よし。そうと決まればあとは衣装だけだ」
「衣装?」
永遠が言いだした言葉に訝しげな顔をすると、途端に悪戯っ子のような笑みが返ってくる。
この顔は何か企んでいると思ったが、永遠自らがその内容を話し始めた。
「ハロウィンと言えば仮装パーティ。って事で、衣装選び手伝って」
永遠は何とも楽しそうにデスクトップパソコンの置いている部屋へと、アレックスを引っ張っていく。
そんな永遠に苦笑しつつも、アレックスは楽しんでいた。
永遠は感情が豊かで、顔に似合わず無鉄砲で喧嘩っ早い所もある。
そうかと思えば素直で真っ直ぐで、全てをさらけ出して全力でぶつかってくる。
時にはあまりに素直すぎて、甘え上手なのか天然なのかと思う事もあるが、そんな小悪魔な所も含めてアレックスは永遠の事が好きだ。
そんな永遠を守ってやりたいとも思うし、頼もしい同志だとも思っていて、その時々によって友達にも恋人にもなれる毎日が楽しくて仕方ない。
アレックスは永遠に引っ張られるままに付いていった。
パソコンの前に座ってキーボードを操作する永遠の横に、もう一つ椅子を持ってきて座る。
永遠がハロウィン用の仮装衣装を取り扱っているサイトを念入りにチェックしているのを見ているうちに、いつの間にかアレックスも真剣に魅入っていた。
サイトには男性用、女性用、子供用の様々な仮装衣装が掲載されている。
その一つの小悪魔衣装がアレックスの目に入ってきた。
日頃から永遠の事を小悪魔と思っていたアレックスは一目でそれを気に入ったが、どうやってそれを本人に着せるかが問題だった。
そんな時、永遠が嬉しそうにアレックスを呼んだ。
「見て見て。これ絶対にアレックスに似合うと思う」
見せられた衣装は、黒のマントにドレスシャツ、ご丁寧にも顔半分を覆う仮面まで付いている、ファントムの衣装だった。
今の自分とはかけ離れすぎる格好と言ってもいいだろう。
「これアレックスに着てほしいな」
ねだるように言われても、流石にこれは勘弁して欲しかった。
「マスクまで付いてるじゃないか」
非難めいた口調で言ってみるが、永遠には関係なかったらしい。
「マスクは手で持っていけばいいじゃん。でさ、玄関に入る時だけちょっとして見せる。絶対これがいいって。アレックスじゃないと似合わないっ」
そうきっぱり言われると、アレックスも悪い気はしない。
段々永遠がそう言うならと思えてくるのが不思議だった。
それでも交換条件を出す事だけは忘れない。
「俺がファントムの格好をするなら、永遠も俺がして欲しい衣装を着てくれるんだろうな?」
「うっ」
どんな衣装を着せられるのかと、一瞬返事に困った永遠だったが、意を決したように大きく頷いた。
「いいよ。俺はアレックスのファントム姿がどうしても見たいから、アレックスも俺に好きな衣装を着せてもいい。でも変なのだったら・・・困るけど」
「大丈夫だ、心配するな。永遠に変な格好なんてさせるわけないだろう。キュートな衣装を着せてやるから」
「ちょ、ちょっと待って。キュートって何だよ。俺は女の子の衣装なんて着ないからな」
「永遠、落ち着け。お前に女の子の衣装なんて着せないさ」
アレックスのキュートと言う言葉に過剰反応した永遠が文句を言い始めたが、一度決めた約束は覆らない。
まんまとアレックスの思惑通り、小悪魔の衣装を着る事になった永遠は、道連れとばかりに雪成には短パン仕様のクロネコ衣装、ロブには水平の衣装を着せる事にして溜飲を下げたのだった。
そしてハロウィン当日、アレックスはファントムの、永遠は小悪魔の衣装を着てロブと雪成が待つ家へと向かった。
辺りをキョロキョロと見回してから、アレックスのピックアップトラックから飛び降りる。
いくら今日がハロウィンだからと言って、小悪魔の格好は少し恥ずかしい。
せめて悪魔にしてくれればいいのにと思いつつも、永遠は律儀に届いた衣装セットを全て身につけていた。
小悪魔の耳付きカチューシャを頭に着け、羽根付きのケープにしっぽも付けた。
そして仕上げにデビルフォークを手に持ち、ファントムの格好をしたアレックスのマントに隠れるよう後ろに回り込む。
「アレックス、仮面は?」
「持ってる」
「じゃあ、早く行って二人を驚かせよう」
「まずはアレックスを見て驚かせてから、俺が出るから」
順番などどうでもいい事だが、永遠にとってはそうではないらしい。
永遠の言う通りアレックスが先に歩き始め、その後ろを自分ではその可愛さを分かっていない小悪魔が付いていく。
「アレックス、仮面を付けて」
細々と指示をしてくる永遠に言われるまま顔半分を覆う仮面を付け、ドアチャイムを鳴らした。
中で微かな声がしたかと思うと、直ぐに勢いよくドアが開けられた。
「いらっしゃ・・・」
「HAPPY HALLOWEEN」
目の前に立つファントムアレックスを見て驚いたのか、迎えに出てきた雪成の声が途切れポカンとしている。
その顔を見届けてから、永遠はアレックスの後ろから顔を出した。
「Trick or Treat」
「永遠!」
雪成は更に驚いて、永遠の名を呼んだ声は少し裏返っていた。
「アレックスに見とれてたってロブに言いつけるぞ」
未だ驚いたままの雪成に言うと、顔を真っ赤にしながら『やめてくれ』と小声で言われて、永遠が笑っているとロブもやって来た。
「誰がアレックスに見とれてたって?」
「教えない」
そう言いながら家の中に入ると、永遠はロブの方へと近づいていった。
「久しぶり、元気だった?」
「元気だったよ、小悪魔ちゃん」
からかうように言われ、ハグしていた体をわざと突き飛ばすように離した。
振り返るとアレックスと雪成も同じようにハグをしていた。
「それで、何でお前がそんな格好をしてるんだ?」
部屋へと移動しながら聞いてきたロブは、仮装した事よりもアレックスの衣装が気に入らないらしい。
「格好いいからって、俺がお願いしたんだ」
悪びれずに言う永遠に雪成も小さく頷く。
「ユキっ。まさかこんなのに見とれてたって言うんじゃないだろうな?」
キスをしそうな程近づいて言うロブに、雪成は慌てて手を横に振った。
「そ、そんな事ないって。でも誰が見ても、似合ってて格好いいと思うよ」
「ユキナリ、ありがとう」
雪成がフォローにならないフォローをしていると、追い打ちをかけるようにアレックスがウィンクをしたものだから、ロブは悔しそうに雪成の肩を抱いて急ぎ足で部屋の中に入った。
「こんな事言うのも変だけど、永遠も似合ってる」
「マジで?でもちょっとこれは恥ずかしかったけど」
そう言いながら雪成に短パン仕様の黒いパンツの裾を引っ張ってみせる。
「でもアレックスがこれが良いって言うから着たけど、どうせなら悪魔とかドラキュラがよかったな」
「永遠、それよりも二人に渡さないのか?」
「そうだった。折角だから二人にも用意したんだよね。着替えてきてよ」
アレックスに言われ永遠は袋をロブに渡し、もう一つは自分が持って雪成の腕を引く。
「僕のはどんな衣装なんだい?」
「それは開けてのお楽しみ。早く着替えないと、雪成の可愛い姿が見られないよ」
そう言うとロブは慌てて袋を持って、別室に消えていった。

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