novel

+KISS...ver.岩七+
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「七条・・・」
「どうしたのですか?」
名前を読んだまま黙り込んでしまった岩井にそっと近づく。
カンバスに向かっていた視線は七条から離れず、近寄る間も逸らされずにジッと見つめられている。
何か気に入らない事・・・いや、不安でもあるのだろうかと口数の少ない岩井の心情を考えてみたが、思い当たらない。
岩井の直ぐ側に立つと、横からカンバスを覗き込む。
そこには自分の姿があり、七条はそっと目を細めた。
「出来たのですか?」
「ああ・・・」
「・・・気に入らないのですか?」
「いや。・・・足りない・・・描き足りない」
岩井の意図する事が分らずに、七条は黙って続きを促した。
「どうしたんだろう?七条の事をもっと描きたい。他のものじゃなくて七条だけをもっと描きたい」
「・・・岩井さん・・・」
「こんな事は初めてだ。俺はおかしくなったんだろうか?もう少しで自分が先に卒業してしまうと思うと、このままここにいてずっと七条を描き続けていたいと思う」
岩井の戸惑いが自分のせいだと分かり、七条は嬉しくなった。
「岩井さん、あなたが僕を好きだと思ってくれる限り、いつでもいつまででも僕を描いて欲しい。卒業しても・・・これからもずっと」
七条の言葉にはにかんだような笑みを口元に浮かべた岩井は
立ち上がると七条をそっと抱きしめる。
「そうだな。そうする。ずっと・・・死ぬまで七条を描き続けていられたらいい」
「そうですね」
そう返事をして体を離した七条の唇に、岩井の唇が重ねられた。
大切な宝物のように、そっと・・・そしてゆっくりと・・・

fin


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